夢追い人の凱旋

「楽しい!」をください。

Re:1st Atelier [第4回] / 噛めば噛むほど。

梅雨を待たずしてやってきた炎天下に四苦八苦し、遅れてきた梅雨の「その分サービスするから」と言わんばかりの豪雨に日々翻弄され悩まされ怒り落ち込みここまでくれば一周回って、最近は楽しくなってきた。と書いてこれは120%の嘘だと自覚した。全然楽しくない。むしろうざったさは日に日に増している気がする。でも文章でくらい、楽しいことにしておきたい。

 

 

「松村、ターツァイを育てます。」

正確には「まつむら」ではないだろうか。「松村くんは何にするか決まった?」そんな先生の問いに答えたのだろうか。何にせよ、小学校2年生、8歳のまんまるな頬から「松村」という角ばった言葉が出てくるのはいささかミスマッチで微笑ましいことこの上ない。しかも、まんまるな頬はそのまま「ターツァイ」という未知の言葉を空気に乗せ、先生までも巻き込み、本来出会うはずのない植物と好奇心に溢れる少年少女を引き合わせる。

今回、私は北斗くんのエッセイを読んで初めて「楽しい」と思った。次はどうなるの?結末は?ハッピーエンド?幼い興味がぶわりと胸を占めていった。さながら図書館の絵本コーナーに居る気分だった。ふかふかのカーペットに、腰を痛めそうなくらい低い椅子と机。薄くて硬くて大きな本。要約すれば内容はいたってシンプル。だがそこには沢山の知恵と世界のルールが詰まっている。語られたのは「目立ちたくて珍しい野菜を育てたら不味かった」だが、同時に「異端を唱えた男の周りで巻き起こる宗教戦争と、真実を知った男の選択」でもある。勇ましく、時に悩みながら、神であるターツァイと向き合い続けた男の美談なのだ。そして親から見れば「努力は報われないこともあるけれど、挑戦することが一番大事」を教えられる教材にもなる。主人公の最後の決断に幼い心は歓声を上げ、親心は「仕方ないな」と眉を下げながら笑う。そんな大人もこどもも「面白かったね」と言えるようなお話。そんな絵本を読んでいるようだと感じた。

 

 

今回の「アトリエの前で」は絵本だった。勿論内容ありきなのだが、句読点もその感想に関わっていると考えている。「早い者勝ちのように野菜の名前が飛び交い、迷いない者と図鑑を手にあーだこーだと繰り返す者に分かれた。」この文章を皮切りに、景色はこどもで溢れる教室へと変わる。バラバラと手が上がり笑い声が上がり、騒がしさの中で「オクラ!」「ピーマン!」と男の子の声が聞こえてくる。状況は刻一刻と変わり続けている。まずいまずい。もっとずっと、みんなが思いつかないような。そんな焦りと目まぐるしさを覚えるのは、読点が少ないからではないだろうか。

私は何度か北斗くんの句読点について「慎重で計画的」と評している。言葉が逃げないように、間違えないように。そんな緊張した息遣いが聞こえてくるようだと思った。だが教室の描写では読点はあまり打たれず、必要最低限と言った感じなのである。読点をきっちりと打たれている箇所より言葉が滑るのは否めないが、場面に相応しい疾走感と、クラスのやかましさが想像出来る。

そのやかましさを割るように、少年は静かに宣言する。

 段を分けて、読点はまたいつもの調子に戻っていた。

 

いつもの慎重で計画的な句読点が打たれている文章が授業参観の作文発表だとして、教室のシーンは台所で料理する母に抱きついて話す武勇伝だ。つまり堅苦しくなかった。一言一言に相槌を入れたくなるような、聞いた後にふうと息を吐きたくなるような文章じゃなかった。自分でも訳分からなくなってきた。何が言いたいかと言うと、面白いとか感動したとかでなく、すごく楽しかった。

 

 

GOOD WILL HUNTINGまだ見れてません!見たら追記したい!する!したらいいな!

===2019.8.24追記===

見ました!私この映画めちゃめちゃ好き!人生とは何かを問うてくる映画だけど、教卓の前に立ち教鞭を持つのではなく一緒に宿題のプリントを覗き込んでくれるような安心感と親近感を憶える映画だった。メイン3人の「人生とは」として掲げている生き方にも共感できる。多くを語らない台詞回しも、どちらが悪いかは重要でない事を含んでいるようで優しい気持ちになる。

一番好きだったのは主人公の仕事場で親友とふたりで話すシーン。

 

*WORD

不安だけじゃなく期待まではねのけちゃった

夕食じゃなくて晩飯。

 

北斗くんのひらがな

 

しだいに

ほお

まとった

かなわない

かっこいい

うらやましい

みずみずしく

ほか

おもしろい

まなざし

すさまじく

はねのけ

すごさ

おいしかった

 

「うらやましい」はひらがななのに「悔しい」は漢字。

 

2019.6.20発売ー2019.7.26返信

 

本当は発売日までに書き上げてスッキリした気持ちで新刊を迎えたいんですが出来てません!!ほぼ勢いで書いてるけど余裕が無いとしんどいね!あとGWH、登録してるネット配信で見れなくて、レンタルショップが遠いのを言い訳に見れてないです!見てから書きたかったんだけどな!!